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第3部 堀教授による基調講演

第3部 堀教授による基調講演
 
 私に与えられたました時間は二十分でございまして、テーマは「芸術のまちづくりと地域の活性化」ということです。私が今日お話ししたいと思うことは、まちづくりに‘芸術’というものを使ってですね、それでまちづくりをしていこうと、そういう時にどんな事がポイントになるのか、どういう風に芸術を使っていくと、まちの魅力ができていくのか、そういうお話をしたいと思います。事例を持って参りましたので、少し事例を見て頂きながらお話を進めていきたいと思います。
では、二つのまちを見ていただきます。みなさんでしたら、どちらのまちに行ってみたいか考え下さい。これが一つ目のまち[写真①]です。
[写真①]
はい次、これが二つ目のまち[写真②]です
[写真②]
 
 [写真①]に行ってみたい方いらっしゃいますでしょうか、はい、手を挙げて・・・お一人、お二人、はい、三人・・・三人。では[写真②]の方・・・たくさんいらっしゃいますね。圧倒的に後者の方が多かったですね。
 今、私はどちらに行ってみたいですかと、質問しましたが、これは要するに、どちらが魅力的ですか?どちらのまちがより魅力がありますか、といった質問だったわけです。
 さて、はっきりと結果がでましたね。こちら[写真①]よりも・・・、こちら[写真②]の方がどうも魅力があるということです。問題は何故、こちらの方が魅力があるのか、その点ですね。まちの中で、何がどうなっていると魅力が出るのか。それが判ると、しんゆりのまちづくりのヒントになりますね。そこを皆さんで考えて頂きたいと思います。
  [写真①]の正面はですね、行かれた方もいらっしゃいますね、今、世界で一番有名な美術館の一つです。スペインのビルバオという工業都市にあるグッケンハイムという美術館です。正面がグッケンハイムという美術館なんですね。美術館が今、通りから見えていますね、ええ、なかなかこのグッケンハイムという美術館が非常に斬新なユニークな建物で、この美術館を目当てに、世界中から人が来ています。展示品よりも、美術館自体がですね、人気を集めておりますね。で、何やらすごいんだよね。これね。最近、日本でもこれを真似してね、花でこういう猫を作ったり、流行っているんですけれども、これは非常に画期的なんですね。これは犬です。お花で作った犬です。で、これがまちの中から見えています。
 一番目のポイント。この今、我々がいるセンター、あるいは音楽ホール、美術館、そういう物を造る時に、今までだと、どうやっていたか。造ればいい。その中で立派な美術展をする。コンサートを行う。そういう箱が出来ればそれでいいんだ。その箱をどれだけ立派に造るか、それが問われている。ところが世の中はもう全然そういう時代ではありませんので、いくら立派な建物であっても、このグッケンハイムの様に通りから見える、つまりまちの中から見えないと、それでは都市実感が、いいまちだなという風にならないわけで、それは都市計画的にですね、まちの中から、中心街の方から、こういう美術館とか音楽ホールがよく見える様に造りましょう、こういう流れが普通です。つまり新百合でも例えば、どこかで野外コンサートをやっている、それが都市の中の他のところからよく見える様にする。芸術作品を公園や道に置く、その芸術作品が、よく見える様にする。それは当然なのですね。ところが今の皆さんの反応で、はっきりしました。見えればそれでいいと。そうではない・・・・。
そうではないということです。これが見えていても、見る場所、つまり道が実は重要だということです。ここの、こちらではなくてね、人間が、今、私達はこちらから写真を撮っているのですけれども私が居る場所、こちらの道[写真①]をよく見てください。この道はどういう道ですか?
 これは車を優先している車道ですね。これ[写真②]、ご承知の様に、同じくスペインですけど、バルセロナですね。サグラダ・ファミリアが見えています。
 皆さん、圧倒的にこちらの方に手が挙がったわけですが、それはグッケンハイムがサグラダ・ファミリアに負けていると、必ずしもそうでなはいです。なぜこちらに手が挙がったか、もうお解りですね?ここが重要なんです。この道は車道と歩道を比べてみますと、どちらが広いですか?歩道の方が圧倒的に広いですね。車よりも人間を大事にしますよ。道の真ん中が広い歩道になっています。人間、即ち皆さんのことを大事にしているまち。皆さんのことをもてなしているまちですね。どんな立派なものがあるのか、どんな立派なものが見えているのか。それよりも来訪者、居住者をどのくらい温かく迎えるか?そういう都市の姿勢こそがですね、皆さんの共感、ああいいところだな、という都市実感に繋がっていくわけです。それをやらないといっくら立派なホールを造っても、アートセンターを造っても、あるいは外でコンサートをやってもですね、なかなかそれだけで、いいまちだなあと、という風に思われるようにはなりません。そういう意味で、これは是非ですね、覚えておいて貰いたいのですね。今、私、車道よりも歩道が広いと言いましたね。実際の具体的な形ですね。幅員(ふくいん)が車道よりも歩道が広い。形ですね。あるいは道の真ん中が歩道である。普通は車道ですね。これも全部、形です。で、私たち人間というのは形をみて、その形に込められている心を読み取るのですね。従って、まちを造るときに、ホールを造る時に、道を造る時に、公園を造る時に、心を形にこめるのです。“ホスピタリティ表現”といいます。もてなしの気持ちを形にして表現する。形になっていないと我々は新百合の温かい気持ちを読み取ることが出来ない。形が重要なのです。ホスピタリティ表現という言い方をちょっと覚えて頂ければ、と思います。いくら立派な美術館が見えていても、都市の側から人を大事にするという風になっていないと、なかなか魅力、芸術が魅力になるというところまでいかない、ということであります。
 
はい、次。また二つスライドを見て頂きます。もう一回、どちらのまちにいってみたいか?お考え頂いて、手を挙げて下さい。はい、これが一つめです。[写真③]行ってみたい方?えー、4人ですね。
[写真③]
 
 はい、次、こちらのまち[写真④]に行ってみたいと思う方。たくさんの方が手を挙げました。はい。これも大きく偏りました。
[写真④]
 
 この建物、こちら[写真③]に手を挙げた方、目利きの方ですね。これは世界遺産、ロシアのサンクト・ペテルブルグのエカテリーナ女王が、ものすごい権力があった女王ですけれども、この人が造らせた、世界でもエレガントにかけては有数の建物ですね、世界遺産です。しかし、その世界遺産でさえもあんまり手が挙がらない。これが現実ですね。なぜか?お考え下さい。どうしてでしょう・・・・・?理由はわかりますね。私達はどんな立派な建物、それが芸術性が高かろうが、そうでなかろうが、どんな立派な建物かよりも、本当にこのまちは私のことを大事にしていてくれているのだろうか?これは、どういうことですか?お前この建物、観たかったら駐車場の中で、つっ立って観ろ、こういう風に言われているわけですね。つまり、まちとしてはホスピタリティがない、という風に捉えられても仕方がないわけです。
 この建物は[写真④]、ヨーロッパというのはご承知の様に石でお城を造りますから、残ります。こういう古い城が数千、どこにでもあります。ここの場合は上の屋根を新しく葺き直ししたので、立派に見えますけれど、もともと単なる普通の古城でして、世界遺産でもありません。日本でいえば国宝級なものでもありません。普通のお城です。しかし、圧倒的多数の人がこちらに手を挙げました。理由は・・・、わかりますね・・・。どうぞ、お休みください。これがホスピタリティ表現です。私達はここを見て、ああ、ここのまちは私のことを大事にしてくれているな、それがですね、都市の魅力、地域の魅力、芸術を、芸術的な建物なり、芸術そのものをですね、魅力的に魅せる、実は最大のことです。どんな立派な建物を造くるのか、どんな立派なコンサートをやるのか、それももちろん重要なのですが、それ以上に、来訪者、居住者を大事にする表現、これが非常に重要だということであります。これだけのクオリティのあるデッキ、なかなかね、ないものなんですよ。しかしね、お金っていう観点、コストっていう観点からだけ考えてみましょう、これだけのデッキを造るお金と、例えばこのお城を造るお金、桁が二つ、三つ違いますね。これだけのデッキを造るのに、いくらでもないんです。でも、これだけのクオリティ、なかなか造れません。で、ここのところ、これを、これから丁寧に、お金ではないです。お金ではなくて人を大事にするスキルとノウハウです。ホスピタリティ表現という言い方をしましたけれども、それに関する極めて高いレベルのスキルとノウハウ。それこそが、これから「芸術のまち・しんゆり」で、次の新たな展開に行く時の一つのキーワードになるわけです。単に芸術があるだけではだめなのです。それが地域の魅力となるためには、そこに人を大事にするホスピタリティ表現というものが備わっていかないといけない、こういうことであります。
[写真⑤]
 
 芸術作品をまちの中に置くというのは日本でもよくありますね。でも、日本のこういうアートが置かれるのと随分違いますね [写真⑤] 。何がどう違いますか?わかりますね。芸術作品を置く前に、まず道全体を人間中心の道に造っていくというところがポイントですね。日本ならばまずどうなります?この芸術作品は車の走行に邪魔にならない端っこにおかれますね。そして真ん中は車がガンガンやっぱり通る様に造られますね。[写真5]では車を遠慮させています。車が通っていいんですよ。車というのは人間にとって便利な道具ですから、便利な道具の使うな、というのは逆に人間にとって不親切です。通っていいよ。でも、遠慮しろ。まちは人間の為にこそあるのです。人間中心、これがホスピタリティ表現の基本的な考え方ですね。人を大事にして、人をどうぞ楽しく歩いてください、楽しく休んで下さい。そういう空間の中に芸術作品を置くとですね、芸術がひかり輝いてくるわけです。これが本当の芸術のまちづくりです。
 今ヨーロッパではこの様に、芸術とホスピタリティ表現を融合させたまちづくりがいたるところで行われてまして、ご承知の様に日本という国は三十年遅れでヨーロッパの真似をしているわけですから、三十年経てば日本もこうなるでしょう。しかし、ぜひ新百合ヶ丘は先んじて三十年待たずに、すぐ始めて頂きたいと思います。
はい、次。[写真⑥]
[写真⑥]
 
 例えば、今のと同じ。これはボルドー、フランスのワインで有名なまちですけれども芸術作品がまちの中に置かれる、車に遠慮して端っこでなくて、道の真ん中に堂々と置かれ、それが休む人たちから、とてもよく見える様にするのです。これを造るだけではダメなのです。これと、人を大事にもてなすホスピタリティ表現、これはカフェですけれども、どうぞここでゆっくりお休みください、お茶を飲みながら、うちのまちを楽しんでくださいというものと、芸術がセットになっている、というところが最大のポイントであります。
はい、次。[写真⑦]
[写真⑦]
 
 これもビルバオで、この場合にはこれは教会ですけれども、例えばこれをホールとしますね、ホールが都市実感、都市の印象深い眺めになって、人が行ってみたい、あるいは居住者がいいところだな、と思う為には、人をもてなす、どうぞここでお休みください、というですね、この場合には公園ですけれどもね、そういうものとセットになっているわけ、ホスピタリティ表現と芸術をセットにしている、ここが重要なポイントです。
 はい、次[写真⑧]。と、いうことは、どういうことか。芸術が場合によっては無くてもですね、人を大事にもてなすホスピタリティ表現でこそですね、まちをつくっていけば、人を大事にする、すごく楽しそうなまちになります。で、そちらを重視して、そこに芸術をむしろ加えていくと、どちらが主かと言えば、人を大事にするということの方が主であって、そこに芸術が加わる。そういう発想にもなっています。この様に、さあ、どうぞここでお休みください。こういうものの存在こそがまちの魅力を高めていくということです。
これは[写真⑧]ベルギーのアントワープですね。
[写真⑧]
はい、次[写真⑨]。
[写真⑨]
 
 これはフランスのリールというまちですね。ご承知の様にヨーロッパでは伝統的にこういう広場というのがありますね。広場ではこの様に複数の人達が休んでいます。日本では広場っていうのはご承知の様にございませんで、これ日本ではなんというか、非常に重要なまちづくりのキーワードですけれども“滞留利用拠点”という様な言い方をします。複数の人たちが、不特定多数の人達が同時に休んで楽しい、この楽しそうな様子を他の人達の楽しそうな様子を見ながら休むというのが大事になってくるんですね。で、先程、学生達の発表の中にWBC(World Baseball Classic)というのがありましたね。大変興奮しましたけれども、いい試合でしたけれども、もしも一人で借り切っていたならば、楽しくないでしょう。盛り上がりませんよ。我々は他の楽しそうな様子をしている人達をみて楽しむという特性があります。これ人間ならではの特性なんですけれども、私達は自分が楽しむ時に他の楽しそうな人をみて楽しむ。従って、これ滞留利用拠点というのは題、極めて重要です。沢山の人がそこで何やら集まって、楽しそうにしている。これを創っていくことが芸術のまちの次なる転換という風に、期待できるのではないでしょうかね。

 はい、次[写真⑩] [写真⑪] [写真⑫]。これ最後です。日本でもこういう風にですね、最先端の日本でやっているまちづくりの一つです。

[写真⑩]
[写真⑪]
[写真⑫]
 何をやっているかというと、ともかく複数の、不特定多数の複数の人がですね、自由にここで休んで、休憩しいていいよ、休憩しながら、ちょっと美味しい物を食べたり飲んだり出来る、で休憩した時に他の楽しそうな人を見ながら休める。これが“滞留利用拠点”と考えて下さい。こういうことが、だんだんやはり“まちづくり”では重要になっていくということであります。
 この後、鼎談ということで、もう一度、これについてお話出来るチャンスを私、与えられておりますので、とりあえず丁度、時間になりましたので終わらせて頂きますが、芸術のまちづくり、その時に、これからの発展のキーワード、ホスピタリティ表現、人を大事にしていくということを少し覚えておいて頂ければと思います。本日はありがとうございました。
投稿者サイト管理者/投稿日2011.03.31
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